複雑なおとしごろ

はてなインターネット文学賞「わたしとインターネット」

  

無かった。インターネットなんて幼少のころはなかった。

小学校の時、当時は文通が流行っていた。

買った本の後ろには文通募集のページがかならずあった。

文通とは、簡単に言えば手紙のやり取りである。

こんなことを書くと自分がすごい昔を生きた人のような気がしてくる。

 

そんな手紙文化に私の中で終わりを告げたのは、20歳を超えたくらいのことだった。

その前に連絡手段としてポケベルもあったけれど、いったん割愛。

 

友人たちがパソコンで”メール”を使って連絡するという空気感になってきた。

当時20~30万くらいしたと思うが、私も流れに従ってパソコンを買い、設定に苦労しながらつなげたものだ。

それでもメールがピコっと来ることが新鮮で、たわいもないことを送りあった。

本当にブームと言うものは、理由なく心を浮かれさせ乗りたくなるものだ。

これが日本を動かす闇の組織の陰謀だとしても、”ブーム”になれば楽しく乗ってけ乗ってけ乗ってけてけてけ、乗ってしまうだろう。

そんなの愚かだ・・・と言う方の人になりたかったが、乗るほうの人になってしまった。

 

その後海外へワーキングホリデーに行き、パソコンメールが活躍するかと思いきや当時はそこまで浸透しておらず、日本の友達とは手紙や電話でやりとりをしていた。

今ならラインですぐに電話も、顔を見て話をすることも出来るのに・・・。

 

日本への帰国後就職したが、私の行った会社には大きなかさばるデスクトップが数台おかれていて、それほど活用している感じではなかった。

 

それが・・・3~4年もすると一人一台の世界に早変わり。

じわーりじわーりとくる時代の変化に戸惑いを隠せなかった・・・のは私より上の世代のようで・・・

指を一本一本使いながら「”お” ”せ” ”わ” ”に” ”な” ”り”、、”ま、ま、まはどこだ?」と打ち込みに苦戦しているおじさま方をたくさん見かけるようになった。

 

もう何年か経つと、一つの部屋に”当たり前のようにパソコンを使いだす世代”と”苦戦するおじさま方”が交じり合うことになるのだった。

パソコンを使い慣れている世代のリサーチの速さ、正確さ、文章作成の速さ、表計算の速さに世代交代を余儀なくされたことだろう。

 

私は微妙な年代で、ゆっくりながらもギリギリインターネットに慣れていくことが出来たギリギリガールズである。

 

知りたいことは何でも出てくる。

少し前に偶然鏡を見た時、舌の奥に複数のブツブツを発見。

「こんなもの今まで無かった!」とインターネットで調べると、舌癌とか恐ろしい病名までもヒット。

「怖い怖い」と騒ぎ立て周りを心配させ、近くの病院を受診。

おじいさん先生が「えー?どれのこと言ってるのぉ?」と聞くので

(失礼ながら)こんなにあるのに見えないの!?と口を開けながら

「奥でふ(奥です)。しはのつへへふらい(舌の付け根ぐらい)」と必死にアピールすると
「えー?これのこと?このブツブツなかったら味がわからないよぉ。みんなあるよ。」と言われた。

色々調べていた私はその診断を聞いても不安が止まらず、別の病院にセカンドオピニオンを聞きに行った。

そこでは若い先生が「あ、それで食べ物の味がわかるんですよ。」と苦笑いでおじいさん先生と同じことを言った。

会社に戻り「みんなあるらしいんだけど、本当にあるかどうか見せて?」と同僚に言いまくり「口の中だから見せたくない!」と言う人たちが多い中、一人だけ「見てもいいよ。」と言ってくれた心優しき先輩の口の中を見せてもらうも「暗くて見えませんよ!」と先輩へ逆切れする始末。

その日から私は周りから「オーバーズの一員」と呼ばれるようになった。

※他のオーバーズメンバーは、腕がチクッと痛いだけで「死ぬー、死ぬー。私はもうだめだ。皆さんさようなら」と言うおじさんなどがいる。今も元気にお過ごしです。

 

知りたい情報も、知らなくていい情報もすべてわかってしまう。

判断は自分でしなければいけないので、昔のほうが大体でユルっといきられたような気もする。

どちらが良いとも言えない、複雑なお年頃である。